【はちみつ文庫】 若旦那は金髪がお好き 3 【R-15】
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□ 若旦那は金髪がお好き  □

若旦那は金髪がお好き 3 【R-15】

今の時代、呉服屋は店を構えるだけではやっていけない。
たとえそれが老舗であっても同じだ。

最後のメールから10日程経った、ある日。

その日も葉介はお得意様の家を周り、言いたくもないお世辞を言い、疲れ果てて店に戻ってきた。
着慣れているとは言え、着物姿で車を運転し行商をするのは肩が凝る。
それでも着物を着るのは、受けがよいからだ。

和服をさらりと着こなす美しい男に、惹かれない女はいないだろう。
それが着物通と言われる相手ならなおさらのことだ。
顧客のほとんどは年増の社長夫人で、葉介の訪問を楽しみに、厚化粧とむせ返るような香水の香りでむかえてくれる。

そんな女に「素敵な着物ね」と言われながら、身体に触られるのは心地よいものではない。
露骨に『特別な接待』を求める客には知り合いのホストを紹介し、それ以外のことは何でもやらなければならない――それが商売人と言うものだ。

そんな健気な息子を置いて、社長である父は母を連れて海外旅行に出かけている。
年の離れた妹は、大学のある東京で遊びほうけていることだろう。

――どいつもこいつもいい気なもんだ。

そう思いながらも、葉介はがむしゃらに働きたかった。
暇な時間があれば、余計なことを考えそうで怖かった。
男というのはしょせん気が小さく、自分に自信の無い生き物だ。
イブのことを想い煩うことで、自分のプライドが傷つくことが許せなかった。

裏の駐車場に車を止めると、葉介は店先に向かった。
日もとっぷりと暮れ、回りの商店は全て閉まっているというのに、葉介の店だけが灯りをともしていた。

――まったく太田さんときたら、9時を過ぎたら灯りを消すように言ってあるのに。

昨今、光熱費も馬鹿にならない。
店に残っているのは先々代からいる、番頭の太田だけのはずだ。
自分が帰るまで店番をしてくれるのはありがたいが、年老いた番頭は抜けが多い。
葉介は引き戸をガラガラと開けると、耳の遠くなった太田に大きな声で呼びかけた。

「太田さん、ただいま。遅くなってすみません。もう帰ってくださ……」

そう言いかけた葉介の唇が止まった。

「……どうして?」

葉介は今、目の前にある光景が信じられなかった。

「ヨースケ、会いたかった!」

そう言いながら、金色の髪を持った天使が胸に飛び込んできた。
男とは思えないしなやかな躰から立ち上る甘い香りが、鼻をくすぐる。
抱きしめようとしたとき、太田が不思議そうな顔でこちらを見てるのに気付いた。

葉介は軽く咳払いし天使を引き離すと、中谷に向かって言った。

「外国のお客さんはスキンシップが好きだね。ははは……」
「ス……スキン……?」
「……ああ、もういいよ。このお客さんは私がお相手するから、太田さんは早く帰ってください」
「よろしいんですか?」
「明日も早いから、今日は帰って休んでください」

太田を店から追い出し厳重に鍵を閉めると、葉介は振り返った。
そして少し首をかかげ、微笑みながら葉介を見つめる天使に問いただす。

「イブ……どうしてここへ?」

葉介は突然の出来事を受け入れられず、目が回るような感覚を覚えた。

「ヨースケに会いたくて来たの! やっと休みが取れたよ」
「メールの返事もくれなかったくせに……」
「携帯を壊されて、メールアドレスが分からなくなった……」
「壊された?」
「恋人と別れたら、ストーカーされて……葉介に返事を書こうとしてたときに、急に部屋にやって来たの。無理矢理携帯を取り上げられて、もうめちゃくちゃに壊されて、データーが吹っ飛んじゃった」
「……」
「すごく会いたかったから、スケジュールを詰めてもらって、やっと休みが取れたの。ヨースケ、会えて嬉しい!」

無邪気に喜びをあらわすイブに、葉介はどう接してよいかわからない。

――恋人と別れたって……。

たった少しの時間を過ごしただけで、そこまでできるのだろうか?
そしてそんな情熱的で若い想いは、冷めるのも早いのではないだろうか。
セレブの気まぐれに巻き込まれたようで、不愉快だった。

「私、ヨースケが……」

葉介はその表情から、その次にくる言葉が分かっていた。

「聞きたくない!」

葉介のキツイ語気に、緑色の瞳が潤み、ほろりと涙が零れた。
それでもイブは震える唇から声を絞り出した。

「私、ヨースケが……好き」
「好きって……1度会っただけだぞ? 俺の何が分かるって言うんだ?」
「初めて会ったときから好き。メールをしてて、もっと好きになった」
「ばかばかしい!」
「……ヨースケのこともっと知りたい」
「……」
「私のことも知ってもらいたい」
「……」
「……ダメ? ……ヨースケのこと、好きになっちゃダメなの?」

――返事をするな!

葉介の理性が言った。

――思ってもどうこうなる恋じゃないだろう? 

2人は違いすぎる。
それは痛いほどわかっていた。
Aリストセレブ――それは、海外のセレブリティーの中でも一握りの特別な存在。
極東の呉服屋の若旦那が想っても叶う相手ではないのだ。

それでも……。

「ああ~っ!もうっ!」

葉介はイブを抱き寄せずにはいられなかった。
きつく抱きしめ、その唇を貪る。
ふっくらとした唇は柔らかく、吸い付いてくるようだった。

「うぅ……んっ」

イブが出した小さな喘ぎが、葉介に火を付けた。
舌を絡め、角度を変えながら快感を求め合う。
イブの舌が蠢くたびに、愛を囁かれているような気がした。
唾液の甘さに酔いしれ、唇を離すと互いに溜め息をついた。

「あ……んっ」
「うん……」

額と額を合わせて余韻に浸っていると、イブの膝頭が葉介の脚の間に割り入ってきた。
そのまま躰を密着され脚を差し込まれると、股間を太腿の付け根で擦りあげられる。

「……ヨースケ……欲しい」

こんな魅惑的な瞳で見つめられ、抗える奴はいないだろう。
既に葉介の雄は昂ぶり始めていた。

それでもイブに求められるがままに、このまま行為に及ぶのは悔しい気がする。
こちらが勝手にやきもきしていたと言えばその通りだが、葉介にとっては振り回された感が否めなかった。

「イブ、着物が出来上がったんだ。それを先に見て欲しい」
「……先に?」
「ああ、着て欲しいんだ。きっと君に似合うから」
「うん。わかった」

イブは葉介に抱きつき、その臭いを嗅ぐように大きく息を吸うと、躰から離れた。

「見せて」
「ああ、こっちだ」

葉介はその手を取ると、イブを店の奥の自宅へと誘った。




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Date:2012/09/21
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Comment:1

Comment

* Re:鍵コメT様

こんにちはー。
コメントありがとうございました!
そうですよね~、外人さんで着物を着こなす方って数少ないですよね。
裄丈の問題があるので、今回は反物も特注と言う設定なんです~。
俳優のT・Kさんは、小柄なので似合っていたのかもしれませんね。
昔は「時代劇俳優は顔が大きくないとだめ」と言われてたくらいですから、やはり着物が似合うってそう言う体型なんでしょうね^^

剃毛は髪は剃りませんのでご心配なく~。
私は超金髪スキーなのでそんなもったいないことできません。>笑
ではどこを?と言うと「そっちの方がイヤーン」かもしれませんが、よろしければ続きも読んで下さいね。
2012/09/21 【ねむりこひめ】 URL #mQop/nM. [編集] 

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