敷布団のシーツを握りしめ、イブが躰を仰け反らせた。
葉介はイブのペニスを頬張りながら、ジェルを付けた指で蕾にを押し広げていた。
ディルドを使い、最大限まで拡張し異物を挿入するプレイのような特殊な例をのぞき、西洋人は尻を自分でならすことが多いらしい。
多くのゲイは行きずりの恋を楽しむだけで、相手の躰に気遣いなどなく、いきなり凶器のような逸物をねじ込んでくることもあるという。
そんな経験のせいか、イブは一人浴室に残ることを望んだ。
しかし葉介にしてみれば乱れていく相手を見るのはセックスの一つの楽しみだし、何より尻を解す相手を一人待つというのは興ざめだった。
「だって……汚いもの……」
そんなことを言われると、たまらなく愛しくなる。
傲慢なのに、どこか純朴なところがイブの魅力だ。
そんなイブを追い詰めるように葉介は指を動かしていく。
「はぁ……んっ。ヨースケ……」
真っ白な肌を朱に染めながら、イブは躰をよじらせた。
体温で甘い香水の香りが匂い立つ。
「ここも好きだろう?」
そう言うと葉介は小さな胸の尖りに口づけた。
果実を舌先で転がし、吸い上げ、歯の先で軽く噛むと、イブはペニスをヒクヒクと震えさせながらよがった。
「あぁ……んっ。葉介のエッチ……」
「自分で弄るくらい好きなくせに」
そう言いながら尖りを少し強く噛むと、イブは後孔に差し込んだ指を締め付けるほど躰を振るわせた。
「はぁ……。もう我慢できないよ。……ヨースケが欲しい」
「俺の何が欲しいの?」
意地悪く問いかける葉介に、イブは瞳に涙をためながら言う。
「ヨースケのペニスを入れて……早くぅ」
「ああ」
そう言い着物を脱ごうと帯に掛けた葉介の手を、イブの柔らかな指が止めた。
「着物を着たままがいい」
もう片方の手では着物を撫でながら、イブはうっとりとしている。
着物を着た男に抱かれることは、彼にとっては限りなくロマンチックなことなのだろう。
――……大島だからいいか。
大島紬は、三代着さらして風合いが出るといわれている。
おろしたての紬は野暮で、寝間着代わりに着て着古す通もいるくらいだ。
体液が付くのはまずいが、今ここで浴衣に着替え高まった気持ちを冷ますようなことはしたくなかった。
着物は洗い張りすればすむことだ。
「ん……。わかった」
そう言いながら葉介はイブを抱きしめ、唇を重ねた。
ふっくらとした唇はマシュマロのように柔らかく、2人は熱い舌を絡め合い、貪るように唇を動かす。
葉介はイブの眼鏡を外そうと手を掛けた。
そに手を、再びイブに止められる。
「ヨースケの顔をよく見たいよ」
「壊れたって、知らないぞ」
「そんなに激しいの?」
小悪魔のように微笑むイブを見ると、啼かせたくなる。
葉介はその両脚を肩に抱え上げると、ふっくらとした尻の間に、逞しく育ち上がった雄を突き立てた。
「あぁっ!」
「……その躰で感じてみろよ」
そう言うと、最奥まで一気に押し込む。
「あぁ……んっ!」
「……好きだよ。イブ」
「あ……ヨースケ、私も……あんっ!」
イブの中は熱く絡まるように葉介の雄を締め付けてくる。
「あぁ……ヨースケ。すごく……硬い……んっ!」
「嫌か?」
「ううん。……あぁっ! いいっ!」
イブの敏感な部分はを擦りあげるように、激しく抽挿を繰り返すと、イブの躰ががたがたと揺れ、眼鏡が音を立てながら動いた。
「はぁんっ! ヨースケ……ヨースケ!……ああんっ……イッちゃう」
「もう?」
葉介の顔が思わずほころぶ。
たっぷりと与えた前戯で熟した躰は早急だ。
「だ……って……いいんだもの。ああんっ。んっ。んっ。あああああーっ!」
イブの蕾がビクビクとひくつき、生き物のように葉介を飲み込もうとする。
ぐっとこらえて、快感が行きすぎるのを待つと、イブが長い手を首に絡め、頬をすり寄せてきた。
「ヨースケ……ヨースケ……」
擦れた声が、葉介の耳を甘くくすぐる。
「イブ。もっと欲しい」
「ヨースケ……今度は後ろから……ね?」
イブはそう言うと葉介に背中を向け、尻を高く突き上げた。
熱くなった葉介は着物を脱ぐと、その躰に覆い被さる。
肌理の細かい肌は吸い付くようにしっとりとしていた。
その背中に口づけを落とす。
雪の中に赤い花弁が散ったような痕が、イブの躰を色づけていく。
背筋を舌で舐め上げると、可愛い啼き声を上げた。
「ヨースケ、ちょうだい。硬いのをいっぱいちょうだい」
美しい獣の疼きに答えるように、葉介が雄を差し込む。
先程よりもゆっくりと、粘りつくように腰を動かすと、イブが堪りかねたように腰を振り始めた。
葉介はイブの胸元に腕を廻し、指先で乳首を捏ね、摘み上げる。
「あ……あぁ……んっ!」
擦れた喘ぎ声と共に、イブの蕾がキュウキュウと葉介の雄を締め付けた。
「はぁ……。イブ、そんなに締め付けたら苦しいよ」
「あんっ。ヨースケ……意地悪しないで。もっと……もっとちょうだい」
「こう?」
腰を深く入れこむと、イブは悦楽の声を上げ始めた。
蕾は熱く絡みついて、葉介の雄を食い尽くそうとしている。
「イブは欲張りだな。さっき達ったばかりなのに」
「ぁあんっ。だってぇ……だってぇ……。はぁんっ!」
深く浅く、リズムをつけて責めれば、イブは激しく喘ぎ頭を振った。
弾みで眼鏡がずり落ち、布団の上に転がる。
「ぁあんっ。あんっ。あんっ。あぁんっ!」
「ああ……イブ。堪らない」
腰と尻がぶつかる音と、淫らな水音が部屋に響いた。
葉介は責めながら、責め立てられている感覚に陥った。
「あっ! ああっ! ……ヨースケ……また!」
「……っ。……俺も限界だよ」
「あっ! ああんっ……あっ。あっ。……いやぁー……っ!」
イブの2度目の律動に、葉介も飲み込まれていった。
何度も求め合った後、2人は海岸に打ち上げられた藻のように、ぐったりと抱き合っていた。
身じろぎ、躰を擦り寄せてきたイブの瞳がいきなり見開かれた。
「えっ?」
「ん? どうした?」
イブは葉介の股間に手を伸ばすと、いきなり弄ってきた。
「お……おい」
いくらなんでも今からもう一戦は苦しいぞと身構える葉介を、イブが可愛い顔で睨みつける。
「ヨースケ……これ何?」
「え?」
「これよ、これ!」
「っ。痛いっ!」
下生えを思いっきり引っ張られ、葉介が悲鳴を上げた。
「ヨースケ、着物着てたのにどうして剃ってないの?」
思わず噴き出す葉介を見て、イブは自分が騙されたことにやっと気付いたようだ。
顔を真っ赤にして、拳で葉介を叩いてくる。
「嘘つき! ヨースケの嘘つき!」
「よせよ、痛い」
葉介は両手を掴むと、イブに顔を寄せた。
「自分だって、結構興奮したくせに」
「いやっ! 馬鹿、離して!」
「それに……」
「それに何よ?」
可愛い瞳が、きつく睨み付けてくる。
「少なくともこの毛が生えそろうまでは、イブは俺のことを思い出すだろう?」
「……」
「……それくらいは覚えていて欲しいじゃないか」
「……馬鹿! やっぱりヨースケは馬鹿! 私、そんなにいい加減じゃない!」
「……」
「ちゃんとヨースケのことが好きだもの」
「無理だよ、そんなの。……世界が違いすぎる」
イブは世界的なモデルで、歳も若い。
華やかな世界で、気持が移ろうのは目に見えていた。
「世界なんて、違わない。……モデルなんてちやほやされるのは、若いうちだけだもの」
「イブ……」
「今は中性的とか言われて仕事もいっぱいあるけど、そんなのすぐに終わっちゃう……。だから自分をしっかり持ってないといけないの」
「……」
時に高慢で、子供のようなイブが、そんなことまで考えているとは想像してなかった。
「仕事は好きだから、やれる限りは続けるわ。今は、いつもそばにいるのは無理だけど……でも、メールもするし、電話だって……いっぱい……するから……」
大きな緑色の瞳が揺らめき、涙が零れ落ちた。
「それに、できる……だけ…会いに……くる……」
嗚咽で言葉がイブの言葉が途切れた。
葉介はその躰をそっと抱き寄せ、頭を撫でながら重い口を開いた。
「……頑張ってみようか」
「ヨー……スケ……?」
「どうなるかは分からないけど……今、お互いが好きな気持を大切にしたいから」
「……本当に?」
「ああ。」
「嬉しい!」
自分にしがみついてくるイブを抱きしめながら、葉介はぼんやりと考えた。
――俺ははこれから、どれほどやきもきさせられるんだろう?
こうして金沢の呉服屋の若旦那と、世界的なモデルの恋が始まったのだった。
END
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