男がシャツを脱ぐと、その鍛え上げられた躰があらわになった。
広い肩幅と厚い胸板、そして逞しい背中は、無駄な脂肪などはなく、適度の筋肉に覆われていた。
彼は、獲物が来たらいつでも走り出し、それを捕らえることが出来る黒豹のような逞しさとしなかかさを同時に持ち合わせていた。
バスルームの大理石の床にシャツを放り投げ捨てると、彼はズボンに手を掛けた。
ふと感じた視線の先に目をやると、アレックスが不思議そうな顔でこちらを見ている。
「どうした?」
「せみさん」
「はあ?」
「せみさんなの」
アレクスは、彼の腹を指さしていた。
どうやら割れたシックスパックの腹筋が、蝉の腹に見えたらしい。
「ソーセージさんは、せみさんだったの?」
彼は笑って受け流し、そのままズボンを脱いでいく。
アンダーショーツを脱ぎ終わった彼を見て、アレックスが声を上げた。
「おおきいー! ソーセージさんのちんちん、おっきいのー!」
「これこれ。そんな大きな声を出すんじゃない」
そう言いながも、まんざらではなかった。
「まぁ、自信はあるがなっ! はっはっはっ!」
馬鹿丸出しである。
アレックスは、自分と彼の物を交互に見比べると、不満げに口を尖らせた。
「ぼくの、ちいさい……」
「まだ子供だからな」
「色もちがうの」
「子供だからな」
「さきっぽも、おっきくないの」
「皮が被ってるからな」
アレックスは不思議そうに小首を傾げる。
「かわ?」
「皮の中に亀がいるんだ」
「かめがっ!?」
「皮が剥けると、亀が出てくるぞ」
「むけるの? たまねぎみたいに?」
アレックスは、自分のピンクの棒を見ながら何かを考えていた。
そして、急にその皮を引っ張り、叫び声をあげた。
「ぎゃんっ!」
「おい、何をしてるんだ?」
「かめさんが、かみついたの~!」
試しに引っ張ったら、その痛さに、亀が奧から噛みついてきたのだと思ったらしい。
アレックスはぺちぺちと、自分のピンクの棒を叩き始めた。
「こらやめろ。痛いだろう?」
「かめさんを、やっつけるの!」
「こら、そんなことをしたら腫れるぞ。亀は大事なんだから」
「かめさん、だいじなの?」
「ああ、そうだ。この亀で、何度女をヒイヒイ泣かせたことか……」
口に出した直後、彼はしまったと思った。
アレックスは不審の眼差しを彼に向けている。
「泣かしちゃだめなの。ソーセージさんもかめさんも、わるものなの!」
ある意味正しいが、ある意味間違っていた。
しかしこのままでは、こちらの亀にもパンチを食らわしかねないので、彼は話しを切り替える。
「とにかく風呂に入るぞ!」
そう言いジャグジーに入ると、少年を手招いた。
「ほら、お前も入ってこい」
その言葉に、先程までの勢いはどこに行ったのか、急にアレックスは耳を後ろに下げる。
「一緒だったら風呂に入るんだろう? さあ、おいで」
「……」
「おや? アイスがなくなるぞ?」
アレックスは、慌てて湯船に足を付ける。
「ひゃんっ!」
鳴き声と共に足を引き上げると、バスルームの隅に逃げ込んだ。
――やはり猫は、水が怖いんだな。
しかし、感心している場合ではなかった。
早く風呂に入れなければ、このまま一日が終わってしまいそうだ。
それでなくとも、昨夜の騒動で一睡もしていない。
彼は、早く仕事を終わらし、ベッドに入りたかった。
「風呂に入らない子は、アイスは食べられないぞ。全部俺が食ってやる」
「だめなの~!」
「なら、早く風呂に入るんだ!」
語気を強めると、少年は泣きそうな顔になり、ジャグジーの縁までやって来た。
しばらく何かを考え、一つ頷くと、彼に手を差し出してきた。
「……だっこ」
「あん?」
「だっこして。そしたら、はいるの」
「ええええええええーっ!?」
――抱っこは、まずいだろう?????
証明に照らし出された少年の躰が、急に艶めかしく見え始めた。
差し出された細い腕の奧には、滑らかな線を描く躰があった。
まだ誰も足を踏み入れたことのない、初雪のような白い胸には……
――ぴ……ピンクの乳首。
そう思った瞬間、ぷっしゅーっと言う音とともに、鼻血が宙を舞った。
「ソーセージさん、ちー!」
「……だ、大丈夫だ」
溢れる鼻血を手で押さえながら、彼は思った。
――……くっ。どうしたんだ? 俺ともあろう男が、子供の裸に鼻血を出すなんて。
しかも相手は少女ではなく、少年だ。
少年性愛者と言えば、彼の中では動物性愛者の次くらいの位置にある変態である。
――って、動物だし!
目の前の少年は、立派な猫耳をぴくぴくと動かしている。
動物少年を見て興奮するなど、変態の極みだ。
――ち……、違ーーーうっ!
彼は心の中で絶叫する。
――そうだ、違うんだ。俺は、純粋に湯あたりしただけだ。それで鼻血が出ただけなんだ。
彼は忘れているが、アレックスの為に水を足した湯は、決して湯あたりする温度ではない。
「だっこー」
アレックスは無邪気に、そのか細い手を差し出してくる。
彼はごくりと生唾を飲み込んだ。
――俺が今からアレックスを抱くのは、風呂に入れるためだ。決して、やましいことじゃないぞ!
彼は自分に言い聞かせるよう、頭の中で何度も確認する。
――アレックスは猫だ。よしよし。アレックスは汚れているから、風呂に入れなければならない。よしよし。アレックスは水が怖いから、抱っこが必要だ。よしよし。よって、俺がアレックスを抱くのは、正しいことなんだっ!
彼は立ち上がると両手を広げ、叫んだ。
「よーし、来いっ。アレックス!」
その胸に、アレックスがぱふんっと飛び込んできた。
密着した肌は絹のように滑らかで、彼の肌に吸い付いてくる。
――……あぁ、気持ちいい~。
うっとりするような肌触りに、止まりかけていた鼻血がもう一度吹き出した。
ぶっしゅ~~~~っ!
バスルームは血だらけである。
アレックスが心配げな顔で覗き込んできた。
「ソーセージさん、だいじょうぶ?」
「大丈夫だとも! 決して、やましいことなど考えてないぞ! はっはっはっ!」
すると何を考えたのか、アレックスがいきなり彼の乳首に吸い付いてきた。
ちゅーーーーーっ。
「ひゃふんっ! ……こ、こら、何をする?」
「おっぱいー」
無邪気な少年の笑顔と、乳首への甘い刺激が、彼の心臓をズキューンと射貫いた。
それと同時に、立派なイチモツがズキューンと立ち上がる。
その時だった。
「ご主人様、失礼いたします。アレックス様の着替えは、こちらの服で……ん、ぎゃーーーっ!?」
少年の着替えを持ってきた執事が、彼らの姿を見て、腰を抜かした。
彼がその腕に少年を抱き、あまつさえそのイチモツが元気に上を向いていたからである。
「ち……違うっ。これにはワケが……」
「ワケ……?」
「アレックスが、乳首を吸ってきて……」
「乳首? 吸う? ……ぎゃぁあああああーーーーーっ!」
執事は、悲鳴を上げてバスルームを駆けだしていった。
「ち……違うんだ……」
彼のうつろな声が、バスルームに虚しく響いた。
ちゅーーーーーっ。
「ひゃふんっ! ……こ、こらっ!」
「おっぱーい」
この無邪気な少年が、大富豪実業家ルシガ・ローランド・アルフレッド・デュフォールを誘惑する日は、そう遠くはない。
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