旅行4日目:
翌日は朝の便で帰るので、実質的に今日が最終日のようなものだった。
アレックスの希望で、終日ホテルでのんびりと過ごすことにした二人は、本館のレストランのビュッフェで朝食を食べていた。
大量に盛られたルシガの皿を見て、アレックスは呆れたが、昨夜はサンドウィッチしか食べずに運動したのだがら仕方ない。
高級リゾートホテルなので、ビュッフェといえど食事は最高だった。
本国での立食パーティー並みのメニューに、二人は朝から舌鼓を打った。
食事が終わると部屋に戻り、シュノーケリングをする為に水着に着替える。
互いの水着を見て、二人は声をあげた。
「何だ、その水着は?」
「いやん、ルシガ。何、ソレ?」
アレックスはライトゴールドの、スーパービキニを履いていた。
肌色に近い色が、まるで何もつけてないように見える。
股間もくっきり見え、美尻がはみ出しそうだった。
対するルシガは、黒一色の膝上まであるダボパンだ。
「ああ……水着も買っとくんだったわ」
そう嘆きながら、アレックスは水着の上に長袖のTシャツを着ている。
「何んでTシャツを着るんだ?」
「あら、ルシガ。Tシャツも持って来てないの?」
「ああ」
「こんな南国で、昼間に何も着ずに海に出たら、水膨れができちゃうわよ」
「そうなのか?」
「日焼け止めも、用意してないんでしょう?」
「ああ」
「日焼け止めは一緒に使えばいいけど、Tシャツはアタシのだと小さいわね。本館のモールで買いましょう」
アレックスは水着の上に、短パン穿きながらそう言った。
モールでTシャツを買うと、二人は本館のビーチに出て シュノーケリングの予約をした。
カーニバル中と言うこともあり すぐに予約が取れたが、次の船まで三十分あった。
待ち時間に日焼け止めを塗る為、ビーチパラソルの下でアレックスが短パンを脱ぐと、その姿に視線が集まった。
ゲイっぽい男も、トップレスの女達も、舐めるような眼差しでアレックスの躰を見つめている。
ぴったりしたTシャツ越しに、アレックスのしなやかで程よい筋肉が感じられる上半身に、あの下半身だから当然と言えば当然だった。
その光景を見て『裸の方がましかもしれん』と、ルシガは思った。
それでもアレックスは気にも留めない様子で、日焼け止めを躰に塗り込んでいく。
長い脚を撫ぜるように塗り込む姿は、妙に色っぽく、ルシガは直視できなかった。
自分のを済ませると「塗ってあげる」と、アレックスが言ったが
「い……いい、自分でする」とルシガは断り、自分で日焼け止めを、ペタペタと塗った。
「ああ……だめよ、そんな雑に塗ったら。貸して、やるから」
アレックスは日焼け止めを奪うと、繊細な指先で丹念にルシガの肌に塗り込んでいった。
その手つきはマッサージのように心地よく、また煩悩を刺激するほどいやらしい。
先ほどまでアレックスを見つめた女達は、呆れた顔でよそを向き、男は嫉妬と羨望の混ざった眼差しでルシガを見た。
塗り終わって暫くすると、呼び出しがかかった。
シュノーケリング初心者のルシガは、浜辺で講習を受けなければならなかった。
ルシガの祖国は森林大国で、湖かプールしかなかったので、海で泳いだ経験すらなかった。
そもそも魔導師に、海水浴は不似合い過ぎる。
初めて海水が鼻に入った時には、その不味さに驚いたが、運動神経は良いので 十五分もすれば上手く潜れるようになっていた。
講習が終わる頃には順番がやって来て、二人はボートに乗りサンゴ礁へと向かった。
シュノーケリングより、スキューバーの方が人気があるので、船は貸し切り状態だ。
心配していた船酔いも、波が穏やかだったので大丈夫だった。
サンゴ礁にたどり着くと二人は海に潜り、南国特有の極彩色の魚を見て楽しんだ。
人に慣れているのか、手を出しても逃げることがなく、魚達は美しい姿を真直で見せてくれた。
アレックスが餌を持って潜ると、それを目掛けてたくさんの魚が集まった。
その姿はゴーグルさえ付けてなければ、まるで海の女神のようだった。
ボートから少し距離はあるが、泳いで行ける場所に、砂浜でできた小島がある。
2人はそこまで泳ぐと、砂浜に上がり休息を取った。
自然と唇と唇が重なる。
モーリス島の海は、太陽の光を反射し、キラキラと輝いていた。
揺れる海面は、アレックスの瞳と同じ透けるような美しいブルーだ。
肩を寄せてそれを見ているだけで、十分だった。
それ以外は何も要らないと思わせる、そんな美しい青だった。
シュノーケリングが終わると二人はコテージに戻り、プライベートプールの横に置かれたテーブルで、ルームサービスのランチを食べた。
プールサイドにあるデッキチェアーはカップル用で、大人が並んで寝れる大きさだ。
食後はそこで海を見ながら、ぼんやりと過ごした。
アレックスはルシガの胸に頬を寄せ、時々思い出したように、優しいキスをする。
穏やかな時間が、ゆっくりと過ぎて行った。
日が沈み始めると、アレックスはTシャツを脱ぎ、プールに入って泳ぎ始めた。
美しいフォームで泳ぐ姿を、ルシガは見つめていた。
「ねえ、ルシガ来て」
誘われてルシガがプールに入ると、水温が少し下がっていることに気づいた。
「アレックス、躰を冷やすぞ」
「ここから見る夕焼けって素敵」
ルシガが近付きアレックスを後ろから抱き締めると、その躰は冷たかった。
「ほら、躰が冷たい。上がろう」
アレックスは振り返り、ルシガに抱きつくと「温かい……」と、言う。
そして唇を激しく求めてきた。
冷えた唇とは裏腹に、アレックスの口腔内は熱かった。
その感覚が心地よく、ルシガの躰も熱くなった。
「ねえ、ルシガ。温めて……」
夕焼けに照らされたアレックスは、妖しいほどに美しかった。
「後ろを向いて」
しなやかな筋肉の付いた背中が、ルシガの目の前に晒された。
後ろから抱き締め、アレックスの躰を弄る。
身体が触れ合う部分が、熱を持ったように熱くなっていく。
「ああ……」
アレックスが甘い声を漏らした。
「しっとりして、気持ちいい肌だ……」
ルシガはアレックスの耳元で囁いた。
「この景色を見ながら、ルシガに抱かれたい……」
内股を弄ばれながら、アレックスが言った。
「ああ……抱きたい」
ルシガはアレックスと自分の水着を脱がすと、その熟し切った身体の中に挿っていった。
身体をぴったりとくっつけて、ゆっくり腰を動かすと、アレックスのそれがルシガ自身に食らいついてきた。
「アレックス……ちぎれそうだ……」
「ああ……ルシガ……。んっ……んっ……」
「……少し力を抜いて」
「はぁ……ふぅ……」
「ああ……そうだ」
「んっ……ああ……ルシガ……すごい」
それから2人は日が沈んでしまうまでの間、互いの身体を求め合った。
最後の夕食を本館のメインダイニングで済ませると、二人はコテージに戻り帰国のパッキングを始めた。
「あん、荷物が入らないわ」
「買い物のしすぎだ」
「思い出がいっぱい詰まってるのよ!」
そんな会話をしながら荷造りをする。
パッキングを済ませると、二人でジャグジーに入った。
いつもならセックスを求めるアレックスも、四日分の疲れが溜まったのか、大きなあくびをしている。
「疲れたか?」
「海につかったから、眠たくなっちゃった。あぁん、最後の夜なのに」
ジャグジーから上がると、躰が解れルシガも眠気に襲われた。
ベッドに倒れ込み、どちらからともなく、うとうとと眠りに入っていく。
互いの身体を抱きしめあって寝る二人の顔は、幸せそのものだ。
そして南国の島で過ごす最後の夜は、静かに過ぎて行った。
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