【はちみつ文庫】 砂漠の王子は美青年 1
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□ 砂漠の王妃は美青年!?  □

砂漠の王子は美青年 1

 そこは中東の砂漠地帯にある小国だったが、石油を含め地下資源が豊富だった為、大変豊かな国だった。

 首都の中央には、立派な宮殿がそびえ立ち、後宮には三千を超える女たちが仕えていた。
 その国の王は若く美男であったが、同時に暴君で、気に入らない人間がいれば、虎に喰わせてしまうような残忍さを持っていた。

 そんなある日の 早朝、王ルシガは、国の諜報部長を呼び寄せて言った。

「昨日、イギリスで見かけた人物を連れて来るのだ」

 諜報部長の額に汗が流れた。

「王様、それはいかような人物でありましょうか?」
「わからぬ。街を車で走っている時に、見かけた」
「特徴はございませんか?」
「……美しかった。背は高く、目が覚めるような金髪に、南国の海の様な青い瞳をしていた」
「恐れながら……他には?」
「時計台の前を、紫色のコートを着て歩いていた」
「名前などは……?」

 そう訊いた後、諜報部長は酷く後悔した。
 案の定、王は氷のような眼差しで彼を見ていた。
 王の沈黙は死に値する。

 彼は慌てて「見つけて参ります。しばしお時間を」と、頭を下げた。




 それから、諜報部の必死の追跡が始まった。
 王は気は短かい。
 夕食までに目星をつけなければ、部長以下諜報部員全員の命が危ないのだ。
 虎に喰われるのは、何としても避けたかった。

 王は先日まで行っていた英国で、どうやらお気に入りを見つけてしまったらしい。
 部長は英国の諜報部に協力を仰ぎ、王の旅程の行動経路から、その時間にその場所にいた人物を割り出そうとしたが、紳士の国では紅茶ばかり飲んでいるのか、対応が遅かった。

 ついには空軍機を出し、部下を連れ、部長自ら英国へと向かった。
 空軍基地に着くとさすがのMI6も慌てたようで、捜査資料を抱えて迎えに来ていた。

「ようこそいらっしゃいました。まずは紅茶でもいかがですか?」
「……いや、それより捜査を」
「資料はこちらです」
「この三名が候補ですか?」

 諜報部長は資料に目を通すと「この人物は!」と、その目を光らせた。
 王の好みの、氷細工のような美貌の女の写真がそこにあったからだ。

「この方の所へ、連れて行ってください」

 部長は書類を握りしめると、MI6にそう言った。




 資料によるとその女は毎日十二時頃にビックベンの前を通り、ダンススクールに通っているらしい。
 ヘリで近くまで行き、車を走らせビックベンまで辿り着く。
 十一時四十分には川沿いに車を止め、双眼鏡で通りを見張った。

 その女が通りを歩いて来た時、ロンドンの冬の低く垂れこめた雲が一瞬晴れたかと思うほど、その周りが輝いて見えた。
 180cmを超える身長に、長しなやかな筋肉がついた手足、金髪は柔らかなウェーブを描き、前髪が軽く額に掛かるショートヘアーだ。
 その瞳は遠目にも、美しい海のように青く輝いているのがわかった。
 白く抜けるような肌に、ツンと先の尖った鼻が、冬の空気の冷たさに少し赤らんでいた。
 紫のコートにオリーブ色のマフラーを巻いた姿は、モデルも顔負けの美しさだった。

「こんな美しい方は、今までに見たことがない……」

 砂漠から来た諜報部員たちは、思わず息を飲んだ。
 さすがは王が、無理を言ってまで、連れて来いと言った女だ。
 しかし英国ではこの手の美人は受けが悪いのか、MI6の職員は何も感じないようだった。

 女が車の前を通り過ぎると、MI6と協力して彼女を車に引き入れる。

「な……何なの?」

 いきなりの事に、女は諜報部員達に殴りかかって来た。
 その力は並の男以上に強かったが、屈強な彼らにかなうはずがなかった。

 MI6が身分証を出し 同行を依頼すると、女は渋々それを了解をした。




 MI6の本部に入っても、女の不機嫌な態度は変わらなかった。

「アレックス・バジルさんですね?」
「そうですけど……」
「昨日の十二時頃、今日と同じコートを着てあの時間ビックベンを通りましたね?」
「ええ……それが何か?」
「実は我が国の王が貴女にお会いしたいと申しておりまして……国までおいでいただきたいのです」

 アレックスは驚いた。

「だって……アタシ、ダンスのレッスンもあるし……行けないわ」
「失礼ながら、アルバイトで生計を立てていらっしゃいますよね?」
「それが何なの?」

 不躾な質問に、アレックスの顔が曇った。

「いえ。貴方にも良い条件なのです。一緒に来ていただけるのなら、この小切手を差し上げます」

 小切手には百万ポンドの金額が書かれていた。

「貴方の一週間を、これで買わせてください……もちろん、王が気に入ればこれ以上の報酬があるはずです」
「こんな大金で……アタシに、何をしろって言うの?」
「それは……」

 部長が言葉を濁すと、アレックスは確認するように言った。

「王様って……ゲイなの?」
「いいえ! バリバリのストレートです! 何しろハーレムには3千人の女がいるくらいですから! 病気の心配も一切無しです!」
「……アナル・セックスは嫌よ」
「ええ、大丈夫です! そう言う趣味はありません」
「……じゃあ、何故アタシを?」
「……王の相手をしていただけたら良いのです」

 アレックスは、怪訝そうな顔をしてMI6職員を見た。
 MI6も不思議そうな顔をして、両手を挙げて首を傾げている。

「本当に、アナルは無し?」
「ええ、我らの神に誓って!」
「1週間したら、ちゃんと返してくれる?」
「約束します」

 部長は知っている。
 どんな美女でも、王は一週間も一緒に夜を過ごしたりしない。
 たいていの場合は二~三日すれば、飽きてしまうのだ。

「じゃ、ちゃんと証書を書いて。アナル無しって明記してね」
「来て下さるんですか?」
「ええ、いいわ」
「では書類を用意します。あ、本国にも連絡をしてきますから」

 そう言って、部長達は出て行った。

 一人部屋に残され、アレックスは呟いた。

「アタシと会って、英語の勉強でもしたいのかしら?」

 アレックスの目の前には、自分の調査書が置かれてあった。

 『sex-M』

 自分のあまりの美しさに、砂漠から来た彼らが、性別の確認をしてないとは、知る由もなかった。




 翌日、部長はアレックスを連れ 飛行機に乗り、砂漠の国へ戻っていった。
 王は彼を早く国に呼びたがっていたが、訓練を受けてないアレックスを空軍機に乗せることは出来ないので、一番早い定期便に乗せたのだ。
 座席は彼がビジネス、部下はエコノミーだったが、アレックスには当然のようにファーストクラスを用意した。

 飛行機の機内で、部長は独り言をつぶやいていた。

「どんな美女にも欠点はあるものだな……」

 昨日はコートの下に厚手のセーターを着ていたので気づかなかったが、先程飛行機に乗る前に会ったアレックスは、七分袖の白のブラウスを着ていた。
 その胸が悲しくなるほど平坦だったのだ。

『王は豊満な胸がお好みだからな……一晩で飽きられるかもしれんな……』

 そう考えると、部長はアレックスが哀れになった。

 大抵の女は来る時は渋る態度を見せても、帰る時は王を慕って泣くのである。
 王は並外れた美形であると同時に……どうやら夜の方も素晴らし過ぎるらしい。

 しかも滞在中は高級宝飾店の宝石を買い与えたりするので、女は後宮に残ることを切望するが、既に三千人もいるので、王が望まない限りは女官長に受け入れてもらえないのだ。
 少なくとも彼が知っている外国人で、後宮に残った者はいなかった。

 しかし、そんな事を考えても仕方なかった。
 王の事は、王しかわからない。
 自分はアレックスを国に無事連れて行き、女官長に渡すまでが務めなのだ。
 そして泣いて帰りたがらない女は、彼の部下によって空港に送り届けられる。

 結局王にとって、女はそんなものなのだ。
 王は後宮の誰も愛してはいない。
 生涯妃を迎えるつもりはないと、公言するほど、女を性の道具としか考えていないのだった。

 部長がそんな事を考えている頃……アレックスはファーストクラスの機内食とシャンパンで上機嫌になり、眠りに落ちていた。


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Date:2011/03/05
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