【はちみつ文庫】 砂漠の王妃は美青年 2
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□ 砂漠の王妃は美青年!?  □

砂漠の王妃は美青年 2

 飛行機が到着すると、アレックスはスチュワーデスに呼ばれ、出口に向かった。
 
 そこには諜報部長と職員が立ち「我々の仕事はここまでです。一週間後、お帰りの際にまたご案内します」と言う。
 見ると出口のすぐ先に気難しそうな高齢の女と若い娘、そして警備員らしき機関銃を肩にかけた兵士がいた。

「なんと、はしたない!」

 高齢の女はアレックスを見るなり、眉を顰めそう言うと、若い娘に何やら指図をした。
 若い娘が彼の顔に、黒いヴェールを掛ける。

「私は女官長じゃ。以後、私の指示に従うように。ついてまいれ」

 女官長の口調は有無を言わさぬものだった。
 アレックスは警備員に挟まれるようにして、空港内の特別廊下を通り外に出ると、ロングリムジンに詰め込められた。
 席に座るとアレックスは、正面に座っている女官長におずおずと質問をする。

「あの……これは、どう言うことなのかしら?」
「どう言うとは?」

 女官長は片眉を上げて、アレックスを見た。

「アタシは……どうなるの? 何をすればいいの?」
「……何を今更。王の夜伽に決まっておるであろう!」
「夜伽って、おとぎ話を読むとか? 王様っていくつなの?」
「そなた、王を愚弄する気か?」
「愚弄って……」
「そなたは、金で身体を買われた身。王の夜の相手をすれば良いのじゃ!」
「何を言ってるの? あたしは身体なんて売ってないわよ!」

 そう言ってアレックスは証書を見せた。
 こんな時の為に、書かせておいたのだ。
 しかし女官長はその書類を見て、鼻で笑った。

「王には、こんな趣味などありわせぬわ」
「だったら……アタシの身体は大丈夫なのね?」
「女として普通に抱かれればいいのじゃ」
「え……っ?」
「何と頭の悪いこと! ほら、そなたの 女のここで……!」

 そう言い女官長がアレックスの股間を触ったと同時に、悲鳴が車内に木霊した。
 瞬時に警備員が銃を構えたが、彼女がそれを制した。

「そ……そなた……これは!」
「これって……アタシは……」

「男です」――と言おうとした口を、女官長が塞いだ。

 直後に彼女が何やら中東の言葉をしゃべりと、すぐにに車が止められ、娘と警備員達が降ろされた。
 再び車が走り出すと、女官長はアレックスに訊ねた。

「今、人払いをした。……そなた、もしや男か?」
「ええ、そうですけど?」

 ふら~り~と、女は倒れそうになった。

「だ……大丈夫?」と、アレックスが身体を支えようとすると、「ええい! 無礼者。触るでない!」と、その手を払われた。

「な……何故、男が。おお……これは大変なことじゃ。王はそなたが来るのを、楽しみにされておられるのじゃぞ」
「そんなこと言われても、アタシは知らないわ」

 アレックスは頬を膨らませ、横を向いた。

「なんとかせねばならぬ……そなた、悪くすれば虎に喰われるぞ」
「……虎?」
「王は気に入らぬ者を、虎に喰わせるのじゃ。そなただけでは済まぬかもしれぬ……私や、諜報部長の命も危ない……おお……恐ろしいことじゃ」

 それを聞いて、アレックスの喉はゴクリと鳴った。
 王はとんでもなく残忍な性格のようだ。
 しかも今の状況だとその矛先が、自分に向かって来る確率が高い。

『これは、お尻の心配をするどころじゃないみたいよ……』

 そう思いながら外を見ると、馬鹿が付くほど巨大な建物が見えて来た。
 玉葱の様な屋根が所々についているのが、いかにも砂漠の国らしい。

「ねえ、あれって……?」
「王宮じゃ。もう着いてしまったか……時があれば、性転換手術をしたものを……!」
「ちょっと、勝手に人の身体を弄らないでよ!」

 そう言いながらも、金色に輝く大きな玉葱を見ていると、身体に悪寒が走った。

『きっとチビでデブでハゲの、脂っぽくって、顔も髭も濃い王様なんだわ……ああ、誰か助けて!』

 そんな思いも虚しく、重厚な扉が開かれ、ロングリムジンはその中に入って行った。




「とにかく、王を怒らせぬように。満足されれば、命は取られまい」
「満足させるって、いったい……」
「それは、そなたの考えることじゃ!」
「そんなこと言われたって」
「とりあえずこれは持っておれ」

 そう言うと、女官長はアレックスに セックス用の潤滑ジェルを手渡した。
 そして、そそくさと後宮に帰ってしまった。

 男であるアレックスは、後宮に入るわけにもいかず 貴賓室に通された。
 金がふんだんに使われた見事な部屋だったが、それを楽しむ余裕はなかった。
 鏡台には化粧道具と装飾品が、そして部屋一面には衣装やヴェールが所狭しとかけられていた。
 夕食時で豪華な食事も用意されていたが、とても喉を通りそうにない。

 それでも最後の食事になるかもしれないと思うと、食べないのは惜しかった。
 ワインで食事を流し込んだ後、時計を見ると七時だった。
 八時半には王の寝室に入り、彼を待たねばならぬらしい。
 逆算をすると、準備を始めねばならない。

 まずは風呂に入り、身体を念入りに洗い、最後に化粧のりを良くするため、冷水のシャワーを浴びた。
 衣装をある程度着たところで、呼び鈴を鳴らし、化粧係を呼ぶ。
 
 化粧は二人の女により丹念に施された。
 下地を作り、彼の瞳の色に合わせ、瞼にブルーのシャドーが濃く塗り込まれていく。
 金色の睫毛を黒く塗られ、太いアイラインで目の周りを囲まれた。
 紅は赤く、チークは驚くほど濃かった。

 化粧係が部屋を出ると、アレックスはコットンで化粧を擦り落とし 薄くした。
 綿棒を使い、アイラインも極力細くする。
 その上からベールを被ると八時十五分を過ぎていた。

 トン、トン、トン。

 扉がノックされた。
 アレックスは泣きたい気持ちでいっぱいになった。

『王様にあったら、全てを素直に告白しよう。そして許してもらおう……』

 そう思いながらも、女官長が去り際に渡してくれた、潤滑ジェルの小さなチューブを衣服に忍ばせた。

『万が一襲われそうになったら……』

 せめて、苦痛は少ない方がいい。
 正直、アレックスは女よりも男の方が好きだった。
 しかし彼にも好みはあったし、身体を売るなんて考えたこともなかった。

『愛がないセックスなんて絶対に嫌』

 そう思いながらも、虎に食い殺されるくらいだったら……きっと身体を許してしまうだろう。

 もちろん問答無用で虎の前に放り出されたら、どうすることもできないのだけれども……。




 王の寝室に足を踏み入れた時、アレックスは思わず感嘆の声を上げた。

「うわぁ……!」

 天井はドーム状になっており、頂点を中心に大きな星が描かれていた。
 その天井から壁、柱に至るまで、使われているのはラピスラズリやトルコ石それに白蝶貝で、細やかな金の縁取りのアラビアン模様の中に、それらが填め込まれていた。
 床にはモダンな模様の毛足の長いふかふかの絨毯が敷き詰められており、重厚な家具は全てに螺鈿が施されていた。
 調度品はどれも金細工だったが、成金ぽさのない上品な物だ。
 キングサイズのベッドには天蓋が施されており、薄紫のヴェールが幾重にも垂れ下がっていた。

 アレックスはそのベッドの上で、王を待つように指示された。
 ベッドサイドには金細工が施されたクリスタルの水差しの他に、ティッシュと、コンドームらしきパッケージが丁寧に並べられている。
 その生々しさに、アレックスの背筋は凍りついた。



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Date:2011/03/06
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