【はちみつ文庫】 ヴァンパイアの涙 2 【R-18】
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□ ヴァンパイアの涙  □

ヴァンパイアの涙 2 【R-18】

Part3:アレックスの行動

 僕はアイツと共に、タクシーに乗って マンハッタンのパークアベニューまで戻って来た。

 通り沿いの高級マンションの上階に、僕らの部屋がある。
 部屋に入るとアイツが「シャワーでも浴びて、ゆっくりするといい」と言った。

 あの後アイツは、タクシーの中で何も言わなかった。
 叱りもしなければ、呆れもしない。
 ただ黙って隣に座っていてくれた。

 僕は熱いシャワーを浴びながら、以前の事を思い出した。
 前に危険な目に合いかけた時も、アイツの目は赤く光っていた。
 そしてその時も、相手はただ見つめられただけなのに、石を投げつけられた野良犬のように逃げて行った。

 なのに、僕は怖くなかった。
 どうしてだろう? 
 何故だか懐かしい気さえした自分が不思議だった。

 その時、ぼくはふとアイツ香水の香りを思い出した。

 抱き寄せられた時に、仄かに香ったあの匂い……逞しいあの胸に抱かれたことを思い出すと、自然に手が下に伸びて行く。
 熱いシャワーを浴びながら、僕は固くなったそれを握りしめた。
 声が漏れそうになるのを抑えながら、僕は手を動かした。
 憂いを帯びた横顔。心配げに僕を気遣う顔。そしてあの魅惑的な瞳……。
 
 次第に手の動きが早くなる。
 もう片方の手で乳首を摘んでみると、甘い疼きが躰を駆け抜けた。

「ルシガ……抱いて……」小さな声で呟いてみる。

 その大きな手で、弄ばれるのを想像しただけで、僕も前はあっけなく弾けた。
  
 浅く息をしながら、シャワーにあたりながらも 涙が滲むのを感じた。
 鼻の奥がツンと痛くなる。

 もう我慢できなかった。
 どれだけの夜、悲しい気持ちで一人慰めたことだろう。
 傍にいて辛い思いをするくらいなら、いっそ嫌われてしまった方がましだとこの時思った。
 そうすれば,また別の道を歩いて行けるかもしれない。
 僕はシャワーを止めると、バスローブを羽織りリビングへ出て行った。

 広いシンプルなリビングの、L字型になった片方の窓際に置いてあるデスクがアイツの仕事場だ。
 アイツはそこで、デイトレーラーをやっている。

「出たか? デリバリーで何か取って食べるといい」

 そう言いながらも、アイツはデスクトップの画面から目を離さない。

 僕はどうしていいかわからなかった。
 僕を決してみないアイツを見ていると、自然に涙が溢れた。

『ルシガ見て。僕を見て!』心の中で叫んでも、アイツは振り向いてはくれない。

 僕はバスローブを脱ぎ捨てた。
 ローブが落ちる音を聞いて、アイツがこちらを見た。

 呆れられてもいい。
 嫌われてもいい。

 もう、こんな思いから抜け出したかった。

「ルシガ……抱いて」

 アイツの返事はわかっていた「何のつもりだ?」そして、その後に「出て行け!」。
 希望どおりじゃないか、僕はやっと解放されるんだ。
 やけになったように、僕は自分の裸身を彼にさらした。
「気持ち悪いやつ」とでも言ってくれたら、僕はアイツを憎むことだって出来るかもしれない。

 しかしアイツの返事は違っていた。

「本気か?」
「えっ?」
「本気なのか?」

 その時僕は、酷くまぬけな顔をしていたと思う。

「冗談なら止めてくれ……」

 アイツの表情が苦痛に歪んでいた。

「違うっ! 冗談なんかじゃない!」
「……いいのか?」

 そう言って、立ち上がると、アイツは真っ直ぐに僕を見た。

「おいで……」

 その一言が信じられなかった。

 その時、その濃紺の瞳に、一瞬赤い光が走ったかに見えた。
 そして誘われるままに、僕はアイツの寝室に入って行った。




Part4:ルシガの愛

 私はアレックスを部屋に誘うと、その身体を抱きしめた。懐かしい香り。そして脈打つ体温が、私の目を赤く変える。

 アレックスが私に言った。

「ずっと……好きだった……」

 どんなに聞きたい言葉だったか……。
 私は彼に訊いてみる。

「記憶が戻ったのか?」
「何の記憶?」

 やはり人間には、前世の記憶を思い出すのは無理らしい。私は思い切って告白することにした。
 それは1つの賭けだった。そして羞恥の姿で愛を告白してくれた彼への、誠意でもあった。

「私は永い時を生きた、人ではない物だ」
「ええ……なんとなく感じてた」
「そうか」
「人は私たちの種族を、吸血鬼と呼ぶ」
「……吸血鬼」
「そうだ……怖いか?」
「ううん。全然」

 お前の目に恐れはなかった。一点の曇りもない瞳で、真っ直ぐに私を見ている。
 そこで私は、大きく息をついた。

「私と交わり、我が精と我が血を受け入れれば、お前は私の仲間になる」
「吸血鬼になるの?」
「……嫌であれば、いいんだ」

 お前はは一瞬考えて「ううん。嫌じゃない」と答えた。

「長い時を生きるのは、苦痛でしかないんだぞ? 時間も止まり、仲間も数えるほどしかいない。永遠の孤独が待っているだけだ。それでもいいというのか?」
「でも一緒でしょう? ずっと一緒にいれるんでしょう?」
「ああ……そうだ。お前を離しはしない」
「僕は一緒になりたい。貴方だけを、一人ぼっちにさせておきたくない」

 私はアレックスを抱きしめた。透けるような肌は滑らかで、暖かく、甘い香りがした。その白い喉に触れた瞬間、すぐにもその喉元にかぶり付きたくなったが、我慢をする。まずは精を与え、その後に血を注がねばならない。

 そして最初で最後の脈打つ身体を、隅々まで触り、口づけした。特に薄く血の気を帯びた乳首は愛らしく、私はそれを貪った。舌で転がし、軽く噛むと、お前が可愛い声を出した。

「ああっ……」
「愛しい……私のアレックス」

 そうして私は、アレックスの後ろを弄った。

「ぃゃ……ぁっ……」

 小さな声で喘ぎ、小刻みに震えるお前が可愛くて仕方なかった。その肌は軽く汗ばみ、生を感じさせてくれる。このままにしておきたかったが、時間がすれ違うのは悲し過ぎる。

 私はアレックスの蕾を解かすと、その中に挿っていった。

「はぁっ! ……うぅ……ああ……っ」

 彼は涙ぐみながら、私のそれを受け入れた。
 ベッドが軋むほどアレックスを泣かすと、我慢が出来なくなった。私の牙がムズムズとその姿を現す。

「アレックス……お前の中が熱くて、絡みついてくる」
「んっ……あっ! ……あぁ……ルシガ!」

 男を知らぬアレックスの身体が熟し切った時、私の精が彼の中へ流れ込んだ。
 同時に我慢できなくなった私は、お前の首に食らいつくと、その血を吸った。最初で最後に味わう血は、甘く香り高かった。
 そして今度は己の牙から、我が血を彼に注ぎ込んだ。

 その瞬間、お前の意識は闇の中に落ちていった。





Part5:ヴァンパイアの涙

 漆黒の闇から目覚めると、僕はベッドに横たわっていた。
 仄暗い中、あの人が心配そうな顔で僕を見ている。

「目覚めたか」
「いま、何時?」
「丸一日半寝ていた。今は昼だ」
「暗い……」
「ブラインドを下ろしてある。暫くは陽に当らぬ方がいい」
「……夢を見た。貴方と女の人の夢。あの人は僕なんだね」

 あの人は、僕の指に口づけしながら「そうだ」と答えた。

「冷たくなったな……」

 もう心臓も、意識をしなければ動かないらしい。

「後悔してないか?」

 そう訊ねるあの人に、僕は答えた。

「ううん。ちっとも。幸せだよ、僕は」
「ずっと探していた……私の宝物」

 あの人はそう言うと、再び唇を重ねてきた。
 体温がないはずなのに、不思議と熱く感じた。

「これからはずっと一緒だね」

 そう言うと、あの人は僕を抱きしめ、涙を流さずに泣いた。
 吸血鬼は涙さえ、失うらしい。
 それは神から与えられた、残酷な罰のようだった。

「泣かないで……」

 そんなありきたりの言葉しか言えなかった。

 僕を抱きしめ、まるで子供のように泣き続ける貴方。
 それが僕を手に入れた喜びなのか、それとも罪悪感なのか、孤独からの解放に対する感謝なのか、僕にはわからなかった。
 しかし目の前で泣いてくれる事で、僕は初めて、大人として対等に扱ってもらえた気がした。


 待たせてごめん。
 そして待っていてくれて、ありがとう。

 二百年振りの、僕の愛しき恋人。




               了


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Date:2011/03/11
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Comment:4

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このコメントは管理人のみ閲覧できます
2011/05/12 【】  # 

* Re: 鍵コメ様

初めまして。
素敵なコメント、ありがとうございましたー!
涙が出るほど嬉しかったです。
お返事が遅くなってしまい、失礼しました。

白薔薇は「こんなレトロな話しを読みたいのは私だけ?」と思いながら書いていたので、感想がいただけて本当に嬉しかったです。
もともとコメディー書きの人なので、シリアスになるとペースが落ちてしまいます。
しかも今、ぷちスランプ中なので週1程度の更新になると思いますが、これからもお付き合いいただければ幸いです。

「ヴァンパイア~」も読んでくださって、ありがとうございました!
ご指摘もすごーーーーーく、ありがたかったです。
何度チェックしても迂闊でそそっかしい性格なので、ミスが多いのです。

これからもお気づきの点があれば、お伝えいただけると大変嬉しいです。

そしてこれからもはちみつ文庫をよろしくお願いいたします。



ねむりこひめ
2011/05/14 【ねむりこひめ】 URL #- 

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2011/05/31 【】  # 

* Re: 鍵コメたぶん様

こんにちわー!
こめんとありがとうございました!!!
HNまちがいございませんでしたよー。

ひっそりとブログを書いているので、コメントをいただけるのは本当にありがたいのです!
特に今回はレトロなお話を書いているので、気に入ってくださる方がいたと大喜びしましたです!!!

「白い薔薇は夜散らされる7」を読んでくださって、 ありがとうございました。
長らくお待たせして申し訳ありませんでした。
このお話、行き当たりばったりの私には珍しく、お話しが最後まで決まっています。
後は書くだけなのですが、プチスランプに陥ってしまって思うように進まないのが悔しいです><

アレックス、流されるだけでなく、やっと一歩足を踏み出してくれました。
銀髪の麗人は、彼だけでサイドストーリーが出来るほど裏話があります。

私は大のハピエンスキーなので、蕩けていただけるかどうかは分かりませんが(笑)ハピエンはおやくそくいたします~~~。
でもその前にもうひともんだいあるかな~。
ふふふ。お楽しみに~♪

シリアスが苦手なので、好きと行っていただけると勇気がビンビン湧いてきます!
次回の更新、出来るだけ早く頑張りたいですが・・・・・・ゆっくりお待ちいただけると、大変うれしいです^^

コメントからいっぱいの元気をいただきました!
本当にありがとうございました!!!!


ねむりこひめ
2011/06/02 【ねむりこひめ】 URL #- 

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