翌日、ルシガは大荷物を持って帰って来た。
「何それ?」
「採血用の機械だ」
「えっ?」
「使わないやつを病院から払い下げてもらった」
「私の為に?」
「……ああ」
「嬉しい!」
アレックスはルシガに抱きついた。
吸血鬼はセックスで高ぶると、血を吸いたくなる。
ルシガはジョージの事は『不幸な事件だった』と理解してくれたようだったが、性交中に同じ事が起こらないよう、輸血の準備をしてくれたようだ。
「今から400cc採るから、待っていてくれ」
「貴方の血をくれるの?」
「私以外に誰がいる? 400ccなら問題ない」
そう言うとルシガは身体に針を刺して、機械を動かし始めた。
アレックスは夕食を持って来ると、ルシガに訊ねた。
「ねえ、どのくらいかかるの?」
「1時間ぐらいだな」
「じゃあ、その間お風呂に入って来るわね」
「ああ」
チューブを通る赤い血液を見ただけでワクワクした。
最愛の人と結ばれる上に、その血まで貰えるのだ。
吸血鬼にとって、これ以上の幸せはなかった。
『やっぱりお医者さんと付き合うって、玉の輿なんだわ』アレックスは、湯船につかりながらそう思った。
身体を丹念に洗い、最後にゆっくりと尻を解す。
今からおこなわれる行為を思っただけで、胸が高鳴った。
一人でイキたくなるのをぐっと我慢し、十分に尻を解すと、肌を桜色に染めて湯から上がった。
バスルームから出て来ると、ルシガは採った血を、輸血台に取り付けていた。
「ルシガー! お待たせっ!」と言って、ルシガに抱きつく。
するとルシガは、その場にへぇにょへによと倒れ込んでしまったではないか。
「どうしたの?」
「貧血……だ」
「あーっ! 食事を残してるじゃない!」
「ホウレンソウもレバーも好きじゃない」
「食事もしないで、血を採ったの?」
「ああ」
「ちょっとまって、何か作って来るから……」
そう言ってキッチンへ向かおうとしたアレックスを、ルシガが引きとめた。
「大丈夫だ。それより身体の準備はできてるんだろう?」
「……ええ。……でも」
「大丈夫だから。おいで」
ルシガに促され、アレックスはベッドに腰かけた。
バスローブを脱がされると、桜色に染まった身体をルシガに晒した。
ルシガはうっとりと眺めると、溜め息交じりに言った。
「アレックス……綺麗だ」
されるがままに、輸血用チューブを取り付けられる。
血はまだ流されていない。
アレックスが高まった時点で、流される予定なのだ。
それからアレックスはベッドに押し倒さると、その唇を貪られた。
ルシガから、激しく舌を求められ……求められ……求められ?
「ルシガ? ルシガ、大丈夫? 気分が悪いんじゃないの?」
「大丈夫だ。続き、続き……」
「もう、無茶しないで!」
「せっかく採血機を買って来たのに、やらずにおれるか」
ルシガは意外にケチで、せっかちな性格らしい。
「もう、逃げるものじゃないんだから……あっ! ……ぁあんっ!」
乳首に強い刺激を受け、アレックスの身体に火が付いた。
ルシガがふら付く身体で、彼の乳頭に吸いついていたのだ。
しかし力尽きると、『ちゅっぽん』と音を鳴らし、彼はベッドに倒れ込んだ。
アレックスはそんなルシガが愛おしくて、彼を受け入れることにした。
「……大丈夫よ、ルシガ。私に任せて。絶対かまないから咥えさせてね」と言うと、アレックスはルシガの起きかけたそれを頬張った。
じゅるっ、じゅるっ、じゅるっと淫靡な音を立ってて吸い上げると、すぐにそれは口の入りきらないくらいの大きさになっていった。
「あん。ルシガ、すごい……」
そのいきり立った物を舌先でペロペロと舐め上げ、くびれた部分を含み舌で弄ぶ。
「ねえ……いい? ……ルシガ? ルシガっ!」
「だ……大丈夫だ」
「やだ、顔色が真っ青よ」
「血の気が下にさがった」
「ねえ、輸血する?」
「それはお前用だ。かまわない、おいで」
ルシガは再び起き上がると、アレックスの手を引っ張りその身体を抱きしめた。
何が何でもする気らしい。
こんなに求められるのは嬉しい事だが、アレックスは彼の身体が心配だった。
「そんな無茶しなくても、いつでもでき……あぁ……っ。んっ。」
その時ルシガの指先が、アレックスの蕾を弄った。
緩やかに円を描き、2本の指が少しずつ入ってくる。
「あんっ。あっ、だめ。だめよ……あぁんっ」
中を優しく掻き混ぜられ、敏感な部分にその指が触れた。
「ひゃっ。や……っ。……あぁんっ!」
撫で上げられるように何度も往復され、耐えようにも声が漏れてしまう。
「さあ、おいで」
上に乗るように言われ、アレックスは尻でそれを含んでいった。
ここまで燃えあがってしまったら、自分を止めようがなかった。
「ああぁっ!」
極太のそれは、軋むようにして身体の中に入っていく。
目が眩むような刺激が、アレックスの身体を貫いた。
しかしそれは大きすぎて、なかなか最後まで入りきらなかった。
ルシガは上半身を起こすと、アレックスの躰を揺らし、その中に全てを納めていった。
「ひぃ……ぁっ。んっ。んっ」
ルシガに貫かれて、アレックスの背筋に快感が走った。
身体の奥から沸き上がるような欲望に、アレックスはルシガの肩に腕を回すと、しがみ付くようにして身体を動かし始めた。
「あっ。いい。あぁんっ。……ルシガぁ……大丈夫?」
「興奮したら、血の巡りがよくなった……。アレックス……締め付けられて苦しいくらいだ」
「良かった……あんっ。はぁんっ」
どうやらルシガは元気になったようである。
アレックスは安心する間もなく、下から突き上げられるた。
さすが女遊びをしているだけに、ルシガの腰の動きは絶妙だった。
荒々しい中にも繊細さがあり、アレックスの感じる部分を確実に捕えていた。
アレックスはその快感に、歯茎がムズムズとしてきた。
「ああ……いや……あぁあっ!」と言う叫び声と同時に、彼の犬歯が伸びていく。
にょきにょきと伸びたそれは、小さな牙となった。
「うわぁあああっ!」
その牙を見て、ルシガの悲鳴をあげた。
「……大丈夫よ……。ルシガ、血を頂戴!」
「了解だ。管を開くぞ」
チューブを通して赤い血が、彼の身体に流れ込む。
するとその瞳が赤く染まり、アレックスは恍惚に酔いしれていった。
「あぁ……すごいっ!」
血を摂取しながらのセックスは、吸血鬼にとっては最高の快楽だ。
全身から悦びが沸き上がり、身体が痙攣した。
しかし変化したアレックスの姿を、ルシガが怖がったのだ。
「アレックス……萎えてしまいそうだ……」
その言葉どおり、彼の物は固さを失いつつあった。
「萎えちゃダメ! ルシガ、後ろから来て」
顔が見えなければ大丈夫だと思ったアレックスは、、尻を高く持ち上げてルシガを誘った。
「アレックス、すまない」
謝りながら、ルシガは深く入って来た。
「はぅっ!……いいの。人間なら、誰でも怖いわ……あっ。あんっ!」
「……くっ。堪らない」
ほっとしたのかルシガのそれは、元気にアレックスの中で暴れ始めた。
そしてルシガは、アレックスの身体に覆いかぶさってきた。
「あっ。だめ……そんなにくっついたら……ああんっ」
「何故だ?……肌が吸いつくみたいで、気持ちいい……」
隙間がないほど体を密着させるながら、ルシガはその腰でアレックスを激しく突いた。
「はぁ……だって、もうイキそうだもの。……ひぃぁっ!」
「私もだ……くぅっ」
「……違うの、本当にイキそうなのぉっ! ああぁぁぁっ」
抱きしめられたまま腰を振られ、アレックスの全身が小刻みに震えた。
ルシガはアレックスを抱え込むようにして、離さなかった。
「あんっ。あんっ。あんっ。だめ……ルシガ……危な……っ」
そう言いかけた瞬間――
蝙蝠の羽根の形をした大きな翼が、アレックスの背中から突然飛び出した。
ルシガは顎を強く打ち、吹き飛ばされた。
その後を追うように、彼から出た白濁も飛んだ。
「はぁ……んっ。あぁ……ん。……イッちゃった。ごめんなさいルシガ」
ルシガはベッドから転がり落ち、頭を強く打って「痛たた……」と押さえている。
アレックスの背中には、悪魔を思わせる大きな黒い羽根が生えていた。
それは彼の金髪と相まって、さながら堕天使の様だった。
「どうしたんだ、その羽根は?」
「真実の愛を得た証よ。吸血鬼でも羽根を持ってる者は少ないの。」
「それは……どうなるんだ?」
「暫くしたら元に戻るわ。そして必要な時に出せるようになるの。こんな立派な羽根が生えて、嬉しい!」
「な……何だかわからんが、良かったな」
「これもそれも、全部貴方のおかげよ! ありがとうルシガ!」
吸血鬼は真の恋人を得た時、その背中から羽根が生える。
その形や大きさは本人の資質と、相手から受ける誠意と愛情によって変わるが、アレックスの蝙蝠型の羽根は最上級のものだった。
他の吸血鬼はこの羽根を、憧れと尊敬の眼差しで見るだろう。
アレックスはそんな翼を与えてくれた、ルシガの愛情が嬉しかった。
それからルシガは、アレックスの為に新鮮な血を作り出すため、ホウレン草やレバーを食べて、週に1回400ccの血を彼に捧げた。
アレックスはそんなルシガの為に、『嫌いな食物克服料理』を作り、昼夜を問わず彼に尽くした。
採血の関係上セックスは週に一日だけだったが、それは濃厚で、アレックスはその度に羽根を出し、何度も達った。
これから先ルシガが望むなら、彼は吸血鬼として一族に迎え入れられるだろう。
何故なら彼は、アレックスに大きな蝙蝠の羽根を与えた特別な人物なのだから。
了
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