【はちみつ文庫】 秘め湯 5 【R―18】
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□ 秘め湯 □

秘め湯 5 【R―18】

 ルシガの背中にアレックスの爪がくい込んだ。
 眉根を寄せた彼の瞳から涙が零れる。

「苦しいか?」

 ルシガの問いかけにアレックスは小さく頷くと、小さな声で呟いた。

「……優しくして……」

 ルシガはアレックスのこめかみに口づけると、更に中へと進む。

「あぁ……っ!」

 アレックスは悲鳴にも似た溜め息をあげ、それから逃げるように躰をずり上げていく。
 その肩を押さえつけながら、ルシガはより深く腰を沈めていく。

「いやぁ……」
「息を抜いて……」
「はぁ……。……ぁあああっ!」
「……可愛い。私の、アレックス……」
「ルシガ。……あああっ!」

 今のアレックスは、汚れを知らぬ白薔薇の蕾のようだった。
 いつも自分を翻弄する妖艶な彼との違いに、ルシガは溺れていた。
 まだ硬いその花芯を押し開き、雄で貫くことに悦びを感じない男はいないだろう。
 それは躰にも、心にも言えることだった。

 拒絶し、戸惑い……そして従順になっていく様は、男の征服欲を満たす。
 涙を流し苦痛に耐える姿に、愛情を感じるのが男というものである。

「ルシガ……。ルシガ……」

 可愛い声で自分の名を呼び、全てを受け入れようとするアレックスが愛おしかった。
 ルシガの雄は半分以上が彼の花芯に押し入っていた。

「もう少しだから」
「はっ……。うぅ……っ」
「力を抜いて……」
「はぁああああっ!」

 同じ行為を何度も繰り返し、やっと彼の中に全てが収まったとき、ルシガまでその瞳が潤むのを感じた。
 アレックスは瞳に涙をたっぷりと溜め、南国の海のようにその水面をゆらしていた。

「全部入ったよ」
「あぁ……。ルシガ、大きい……」
「ゆっくり動くからね」
「あぁ……」

 閉じられた瞳から、また涙がホロホロと零れた。
 ルシガはアレックスの耳元に唇を寄せ、腰に響くような低音で彼に囁いた。

「アレックス、愛してる」
「あぁ……ルシガ……」

 最初、腰は揺らすように動かされた。
 激しくスライドさせるのではなく、リズムを付けて振動を与える。

「あっ……。あぁ……ん」

 アレックスの中に甘痒い快感が広がり出してから、やっとルシガはスライドを始めた。

 彼の弱い部分は知り尽くしていた。
 丘を切っ先で擦りあげるように腰を動かすと、アレックスはどう感じていいか分からず、苦しげに喘いだ。

「恥ずかしがらなくていい。感じたままに声を出してごらん」
「ぁ……ああっ!……ルシガ……変。……変になっちゃう」
「変になって良いんだよ。私がいる。怖がらないで」

 何度も丘を擦りあげられ、ルシガの手でペニスを扱かれたアレックスは、鳴き声あげた。

「あっ……あぁっ……ぁ……あんっ。だめ……そんなの……」
「でもお前のここは欲しがってる。今にも弾けそうだよ」
「いや……やめて。……恥ずかしい……」

 ルシガの腰と手の動きが激しくなると、アレックスはもうそれ以上言葉を発せられなくなった。
 甘い吐息と、喘ぎ声だけが彼の口から零れた。
 ルシガの動きに合わせて腰を揺らし、頂点へと上り詰める。

「あっ。あっ。あっ。あぁああーっ!」

 叫び声と共に、アレックスが前が果てた。
 同時に生じた後ろの律動が、ルシガの雄を飲み込む。
 キリキリと締め付けられ、ルシガも後を追うように爆ぜた。

 荒い息のまま、ルシガはアレックスの躰を強く抱きしめて言った。

「……最高だったよ、アレックス」
「……恥ずかしい……」

 頬を染めて俯くアレックスを見て……

 ――もう! 清純で、色っぽいんだから! これなら後十回はいけるぞ!(ちょっと大げさ)

 ルシガは、再びアレックスの上に覆い被さっていった。




 朝日と共に、小鳥のぴちゅぴちゅという鳴き声が、何処からか聞こえてきた。
 ルシガは布団の中で小さく寝返りを打つく、全身が筋肉痛であることに気づいた。
 あの後数え切れないくらい、アレックスを抱いたのだ。
 最後の射精を終え、倒れ込むように眠ったのを覚えている。

 アレックスはどうなったかと隣を見ると、布団の中にいなかった。

「アレックス!」

 ルシガは飛び起き、アレックスを探した。

「アレックス? アレーックス!」

 その時、部屋の襖が開かれ、朝風呂に行っていたアレックスが戻ってきた。

「何を叫んでるのよ、ルシガ?」
「お前、何処に行ってたんだ?」
「お風呂に行ってたのよ。誰もいなくて気持ちよかったわぁ~」
「……って、お前、元に戻ったのか?」
「元に戻る? 何それ?」
「良かった! 良かったなー、アレックス!」

ルシガはアレックスに抱きついた。

「いやん、ルシガったら……朝からやる気、満々なんだからぁ……」
「……いや、違う!」
「んふふ。でもアタシもその気よ。だって昨夜はなにもしないで寝ちゃったじゃない?」
「えっ? 何も覚えとらんのか?」
「? ……何言ってるの? それよりねえ、今日は雪が積もって帰れそうにないから、一日中しましょうね♪」
「え? ええっ?」
「昨夜すっごくエッチな夢を見たの。アタシが初めてで、ルシガがすっごく燃えてる夢。ルシガ優しくて最高だったわぁ」
「へ? お前にとって、あれは夢なのか?」
「ねえ、ルシガ。初めてごっこしましょうよぉ~! きっとすごく燃えるわよ!」

 そう言うとアレックスは布団に横になり、ルシガに言った。

「さあ、処女の私を襲ってちょうだい!」
「処女って……」
「ねえ早く~」
「早くって……」

 ルシガはこの時思った。

 ――あのままにしておけば良かった。

 と。

「何してるの? 早くぅ~」
「いや、まだ朝飯も食ってないし。……そうだ、風呂に入ってくる! 内風呂があったな」
「何よ、つまんなーい」

 ルシガは、部屋の中にある内風呂に逃げ入った。

 総檜造りの風呂は、木の香りでいっぱいだった。

「ああ~、……気持ちいい……」

 湯船に顎までつかって躰を伸ばしていると、ガラリと扉を開く音がした。

「ま、まさか……」

ルシガが恐る恐る振り返ると、そこには素っ裸のアレックスが立っていた。

「一緒に入る~♪」

 ――やっぱりな……。

 アレックスは湯船につかると、ルシガに抱きつくと、言った。

「ねえ、ルシガ、しましょうよぉ~」

 ――やっぱりな……。

 この旅館にいる限り、ルシガに逃げ道はなかった。




 翌日。

 ようやく雪も解け、アレックスの車が坂道を下っていく。
 
 温泉と男の精を受け続け、お肌がツルツルのピカピカのアレックスの隣に、しおしおに萎れたルシガの哀れな姿があった。
 その目の周りは、クマで真っ黒である。

「ルシガ、温泉楽しかったわね♪」
「ああ……」

 ルシガは返事をするのも息絶え絶えである。

「また一緒に行きましょうね!」
「……」
「ルシガ? 聞こえなかった?」

 ――温泉なんて懲り懲りだ。

 ルシガは胸の中で思ったが、それを口にする元気もなかった。

 アレックスの鼻歌が響く車内で、ルシガは朝だというのにうたた寝を始めた。
 
 外には春の空気を感じる、澄み切った青空が広がっていた。








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Date:2011/03/30
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