【はちみつ文庫】 世界名作劇場:ツンデレラ 1
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□ ツンデレラ  □

世界名作劇場:ツンデレラ 1

 昔々ある大きなお屋敷に、一人の青年が住んでいました。

 切れ長の瞳が印象的な美丈夫でしたが、早くに父上と死に別れ、可哀想に思った母上が甘やかして育てたので、ずいぶんと我が儘な性格になってしまいました。
 その上侯爵家の一人息子として、幼くして主となったので、ひどく高飛車でした。

 青年の本当の名前は『ルシガ』でしたが、そんな性格だったので、みんなは陰で彼のことを『ツンデレラ』と呼んでいました。

そんなある日――

「なんだと! 聞いてないぞ、そんなこと!」

 ツンデレラの怒声が、屋敷中に響きました。

「でも相談なんてしたら、あなたは反対してたでしょう?」 
「いい年して、再婚だなんて……何を考えてるんだ!」

 そうツンデレラが言いかけたとき、部屋の扉が開きました。
現れたのは子豚が三匹……と一瞬間違うような、ふくふくとした親子でした。

「なんだ、このちんまくて、コロコロしたやつらは!」
「これ、失礼な。貴方の義理のお父様になる方と、弟達よ」
「冗談じゃないぞ!」
「そういうと思って、もう結婚式は済ませたから」

 さすがツンデレラを生んだだけあって、母上もなかなかの強者だったのです。

「なんだとー!」
「おーほほほほ」

 高笑いながら立ち去る母に向かって、ツンデレラは

「畜生! 私は認めないぞー!」と叫んだのでした。

 



 さて、新しくやって来た家族は、みんな良い人でした。
そんな三人をツンデレラは、父親をブー、上の弟をフー、そして下の弟をウーと呼んで、下僕のように扱いました。

 丁度ツンデレラの暴君ぶりに、屋敷中の使用人がやめていったので、仕事はたっぷりあります。
 ツンデレラは母上の目を盗んでは、三人を扱き使っていたのです。

「ブー、床にほこりが溜まってるぞ。こらフー、なんだこの食器の洗い方は。おいウー、窓ガラスが曇ってるじゃないか!」

 ところがある日徒然、母上が亡くなってしまいました。

 それと同時に、義理の家族達は態度が一変……と思いきや、ブーもフーもウーもみんな本当に良い人で、今までどおりツンデレラに尽くしてくれました。

「お前らなんかに、感謝なんかしてないんだからな!」

 そう言いながもツンデレラは、自分も家事の手伝い始めました。

「ルシガや、手伝ってくれてありがとう」と言う義父に

「馬鹿野郎、手伝ってるんじゃないぞ。洗濯は身体に良いからしてるだけだ! ほら、洗い物を出せ」そう言うと、ツンデレラは洗濯を始めました。

 しかし、暫くすると腹が立ってきました。

「なんで私が洗濯をしなければならないんだ。こら、ブー。お前がしろ!」
「わかったよ、ルシガ。お前は休んでおいで。後は私たちでやるから」

 義父はそう言うと、あかぎれができた手で寒空の下、洗濯物をごしごしと洗っています。
 義兄弟達も手伝って洗濯物を干してる中、 ツンデレラは「やれやれ大変な目に遭った」と言いながら、暖炉にあたりながらホットショコラを飲んでいました。




 そんな日々が続いたある日、お城から使いがやって来ました。

「ルシガや。お城から手紙が届いたよ」

 義父は息を切らしながら、駆けてきました。
ツンデレラは手紙を受け取ると、封を切り、読み上げました。

「なになに……城で、姫の婿を決める舞踏会があるから来いだと? 私を呼びつけるとは生意気な」

 そう言うとツンデレラは、招待状を放り投げてしまいました。

「ルシガや、行かないのかい?」
「何だ? 行きたいのか?」

 三匹の子豚は頷きました。

「なら、お前らだけで行け」
「本当に、いいの?」

 上の弟のフーが、訊ねました。

「本当だ」
「嘘じゃない?」

 下の弟のウーが、再度確認しました。

「しつこいな。行きたいなら勝手に行けばいいだろう!」
「ありがとう、ルシガ!」

 三匹の子豚は、大喜びしてお礼を言いました。
 この屋敷に来て以来、三匹は舞踏会はおろか、出かけることすらなく下働きをさせられていたので、嬉しくてたまらなかったのでした。



 さて舞踏会当日がやって来て、三匹は喜々として出かけていきました。
 おめかしした親子を、ツンデレラは機嫌良く見送ったものの、一人になるとだんだんと腹が立ってきました。

「なんで私が、一人で留守番をしなければならないんだ!」

 ツンデレラは、仲間はずれにされた気がしましたが、それは気のせいでした。
 自分で許可を出したのを忘れたかのように、ツンデレラは逆ギレしました。

「畜生、誰が留守番などするものか。私も舞踏会に行ってやる!」

 ところがツンデレラには馬車がありませんでしたし、新しい衣裳も用意していませんでした。
 当時、舞踏会で同じ衣裳を二回着るのは、恥ずかしいことでした。

 しかしツンデレラは、障害があると燃えるタイプだったのです。
 行けないかと思うと、ますます行きたくなる性格なのでした。

 そこでツンデレラは思いつきました。
 森には『心の綺麗な人を助けてくれる妖精』がいるのです。
 その妖精に助けてもらおうと思ったのです。

「よーし、妖精を捕まえに行くぞ!」

 そう言うと、ツンデレラは森へやってきました。
 妖精が通りそうな場所を見つけると、そこにネズミ取りを置き、彼らの大好物であるお菓子を仕掛けました。
 しばらくすると『バッチーン』と言う音がしたかと思うと「助けて~」って言う悲鳴が聞こえてきました。
ツンデレラが罠を見ると、そこには罠に脚を挟まれた可哀想な妖精がいました。

「そこのハンサムなお兄さん、助けてください~」
「助けて欲しかったら、パーティーへ行く準備を手伝え」
「ええ? 妖精は、心の綺麗な人しか助けないんですよ?」
「バッチリじゃないか」
「貴方の性格の悪さは、妖精界でも評判です」
「なんだと~?」

 ツンデレラは、罠を指でぐりっと押しました。

「痛いっ! 助けて~!」
「助けて欲しかったら、手伝え」
「い……嫌です~」
「これでもか?」

 ツンデレラは、再び罠をぐりぐりしました。

「んぎゃ~っ! わ、わかりました! お手伝いさせていただきます」
「よし、では馬車を用意しろ。従者も一緒にな。それから衣裳も最新流行のカッコイイやつにしろよ」
「その前に罠を外してください。脚が折れちゃいます~」
「外したら逃げるだろうが。まずは願いを聞いてもってからだ」
「あなた、本当に性格が悪いですね」

 ツンデレラは、三度罠をぐりぐりぐりと押しつけた。

「ぎゃ~。わかりました! 馬車に従者に衣裳ですね。おまかせください~!」

 そう言うと妖精は、銀色の粉を ルシガにかけました。
 するとそれまで着ていた普段着が、立派な衣裳に替わりました。
 
「そこに咲いている野薔薇を取ってください。それからあそこにいる蟻六匹と、キリギリスもね」

 妖精がそれらに銀の粉をかけると、薔薇は深紅の馬車に、六匹の蟻は黒馬に、そしてキリギリスは従者になりました。

「よし、これで舞踏会に行けるぞ!」
「ああ、行く前に罠を外してくださいよ~」
「お前はまだまだ役に立ちそうだが……まあ、仕方ない。約束だからな」

 そう言ってツンデレラが罠を外すと、妖精は飛び立ちながら叫びました。

「よくも酷い目に合わせてくれましたね! これはお返しです!」

 と言いながら、ツンデレラの股間に銀の粉をかけました。

「な……何をした? 股間が重いぞ?」
「ふふふん。今、パンツをガラスにしてやりました。これで舞踏会で楽しむことは出来ないでしょう」
「馬鹿野郎。こんな物脱いでやる」
「あ、それ、人から脱がしてもらわないと、脱げませんから」
「なんだと?」
「しかも、ガラスのパンツ以外の魔法は、十二時を過ぎると解けるようになってますからね。あーはははは!」

 妖精は高笑いをして去って行きました。

「くっそー! 性格の悪い妖精め!」

 ツンデレラは自分のことを棚に上げ、妖精の悪口を言いました。

 ガラスのパンツは重く、また割れたら怖いという恐怖感から、歩くのがやっとで、踊るどころではありません。
 これでは舞踏会を楽しめない……と思った直後、ツンデレラは閃きました。

「な~んだ。ナンパをして、女にパンツを脱がしてもらえば良いんじゃないか!」

 ルシガは名案に満足すると、従者に言ってお城へと馬車を走らせました。




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Date:2011/04/07
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